久留米は福岡県南部・筑後地方にある市で、古くから城下町として栄えてきました。
この地域で作られる絣が”久留米絣”と呼ばれており、1800年頃に旧久留米藩にいた井上伝が発案したことが久留米絣の起源であるとされています。
久留米絣は柄の部分が白くなっているのが特徴で、柄を生み出すために、先に糸の束を縛ったもの(くくり)を染色します。
このとき縛っていた(括っていた)箇所は染まらずに白いまま残るため、この部分がかすれたように白く浮かび上がり柄をつくるもととなります。
そうして染めた糸を一本一本織ることで、あの独特の模様が織り上がっています。
久留米絣は1957年に、木綿でははじめて「国の重要無形文化財」として指定されております。
職人の高い技術によって作られる久留米絣にはファンの方も多く、着物以外のアイテムで日常使いしているという人もいらっしゃるほど。その久留米絣の魅力の源泉は、以下3つが挙げられます。
1.手括りされた絣糸による手仕事の味わい
久留米絣久は「糸束を縛って染色したものを織る」ことで作り上げられます。
この「糸束を縛る」作業を「括り(くくり)」と呼び、手作業で行うことを「手括り(てくくり)」と呼びます。
手括りは久留米絣の柄、そして全体の仕上がりを左右すると言っても過言ではありません。
染色中には糸がほどけないように、しかし解くときには解きやすいように手括りを行うには、熟練した技が必要です。
現在では工業化が進められ機械で行う工芸品もありますが、久留米絣では、機械には生み出せない深い味わいを出すためにも、この括る工程だけは現在でも職人が担当しています。
2.鮮やかかつ深みのある藍色
久留米絣は「天然で純正の藍を使用すること」が基準のひとつとなっています。
そのため久留米絣は非常に美しい藍色に仕上がり、この「藍色の鮮やかさ」こそが、人々を魅了する最大の理由とも言えます。
久留米絣は、天然の藍を発酵させて糸染めを行うという昔ながらの染色方法を用いることで、糸そのものの素材感や味わいとともに、凛とした美しさを発揮する織物なのです。
3.手織りが生み出す素材感
何年にもわたって受け継がれてきた「投げ杼での手織り作業」は、素朴な味わいを生み出す仕上げとして非常に重要な工程です。投杼機(なげひばた)は誰にでも使えるものではなく、洗練された技術を持った熟練の職人しか久留米絣を仕上げることができません。
現在では機械織の久留米絣もございますが、この「投げ杼での手織り作業」によって織りあげられた久留米絣のやわらかななかにも強さのある素材感は、格別です。
1.デザイン作成
経糸と緯糸の配分数や糸の伸び縮み、絣糸の特性、作者の個性などを考慮しながらデザインを考え、図案を作成します。
糸の収縮具合は柄の仕上がりを左右するため、職人の知識と経験が必要な重要な工程です。
図案をもとに糸の配分数を計算して記入したものを「絵紙」、伸縮の程度を踏まえ図案を書き直したものを「下絵」と呼びます。
2.整経と整緯
模様ごとに異なる絣糸と地糸の本数を割り出し、伸縮を考慮しながら経糸を整経します。
また緯糸は20本単位で、経糸の柄模様の数を考え整緯していきます。
3.糸たき・さらし・糊付け
2~4時間程度、沸騰したお湯に糸を浸けて不純物等を落とします。
その後、漂白して最後に糸が崩れないように糊付けを行います。
こうすることで糸が強化され、色味も美しく仕上がります。
4.括り
柄となる部分に色がつかないように、アラソウという麻を使って糸を固く括ります。
括りの工程は、久留米絣の仕上がりを決める上で最も重要な工程です。
染色が完了すれば、何度も水を入れ替え余分な染料と不純物などを取り除き、最後に湯洗いをします。
糊付けはこの次の工程で糸が毛羽立たないように、そして糸の強度を高めるために必要な作業です。
機械織りの場合は、20本のトングの基本線に沿うよう緯糸を巻いていきます。
このときも柄模様がずれないように注意を払って巻き取ります。
洗練された技術を持った職人のみが行うことができる作業です。
湯のしは生地をしなやかな生地にするためにも必要な工程です。
本だたみというたたみ方で綺麗にたためば完成です。